広島の経済界に希望と同時に警鐘を鳴らすニュースが飛び込んできました。広島大学発のベンチャー企業設立数が、累計100社を突破したという快挙です。これは、広島が研究とイノベーションを核に新たな産業を創造し、地域経済を牽引しようとする強い意志の表れであり、スタートアップエコシステムの成熟を示しています。
しかし、この喜ばしいニュースの裏で、私たちが目を向けなければならない厳しい現実があります。それは、「ITリテラシーの格差」です。
当たり前を更新するスタートアップと、立ち止まる中小企業
広島大学から次々と生まれるベンチャー企業の多くは、ITを当たり前のインフラとして捉え、最新のテクノロジーを駆使して社会課題を解決したり、人々の生活をより豊かにするサービスを生み出しています。彼らは、データドリブンな意思決定、AIを活用した業務効率化、クラウドサービスによるコスト削減など、ITを「使いこなす」ことで、従来のビジネスモデルを打ち破り、新たな市場を切り拓いています。
一方で、多くの広島の中小企業ではどうでしょうか?「うちはアナログだから」「ITはよくわからない」といった声も聞かれます。もちろん、長年培ってきた経験や技術、顧客との信頼関係は中小企業の大きな財産です。しかしデジタル化が急速に進む現代において、ITを「当たり前」に活用する企業と、そうでない企業との間には埋めがたいほどの差が生まれつつあります。
このままでは、新しいテクノロジーを柔軟に取り入れ、社会の変化に迅速に対応できるスタートアップ企業が成長を続ける一方で、昔ながらのやり方を続ける中小企業は市場競争の波にのまれて淘汰されてしまう未来が現実味を帯びてきます。
国の施策もベンチャー重視へ?中小企業DX投資の行方
さらに懸念されるのは、国の施策の方向性です。近年、政府は「スタートアップ育成5か年計画」を掲げ、ベンチャー企業への大規模な投資や支援を強化しています。これは、日本経済全体の成長を牽引する新たな産業の創出を目指すものであり、非常に重要な取り組みです。
しかし、その一方で、「中小企業へのDX支援よりも、ベンチャーへの投資の方が将来的な価値を生む」と判断され、中小企業向けのDX推進施策や補助金が縮小されるのではないか、という声も聞かれます。もし本当にそうなってしまえば、中小企業がDXを推進するための外部からの後押しが減り、自力での取り組みがより一層求められることになります。
ユニコーン10が示す、広島の未来図
広島県もこの危機感を共有し、未来を見据えた取り組みを進めています。その一つが、県内から10社のユニコーン企業(評価額10億ドル以上の未上場企業)を創出することを目指す「ユニコーン10」プロジェクトです。これはイノベーションを起こすスタートアップを支援し、広島経済を牽引する存在へと育成しようという、非常に意欲的な計画です。
このユニコーン10の動きからも分かるように、広島はITやデジタル技術を活用した新たな産業創出に本腰を入れています。こうした環境下で中小企業が生き残り、さらに成長していくためには、ITは「あると便利」なものではなく、「企業活動の基盤となる重要な力」として積極的に向き合う必要があります。外部からの支援がどうなるかわからない今だからこそ、中小企業は自ら動く意識を強く持つ必要があります。
中小企業が今すぐ取り組むべきこと
では、具体的に中小企業は何をすべきでしょうか?
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全社的なITリテラシーの底上げ
経営者だけでなく、社員一人ひとりがITの基礎知識を身につけ、日々の業務で活用できるレベルを目指す必要があります。PC操作、インターネット検索、業務ソフトの活用はもちろん、クラウドサービスの利用や情報セキュリティに関する意識向上も不可欠です。 -
デジタルツールの積極的な導入
業務効率化、顧客とのコミュニケーション強化、データ分析など、自社の課題解決に役立つデジタルツールを積極的に導入し、使いこなすことで生産性を向上させましょう。 -
ベンチャー企業との連携
広島大学発のベンチャー企業をはじめとするスタートアップは、中小企業にはない新たな視点や技術を持っています。積極的に連携を図ることで、共同での新サービス開発や既存事業のイノベーションが生まれる可能性があります。 -
専門家への相談
自社だけでIT化を進めるのが難しいと感じる場合は、専門家や支援機関に相談することも重要です。私たち「DX学校広島中央おりづる校」のような場所も、中小企業の皆様のIT力向上を全力でサポートしています。
危機感を希望に変えるために
広島大学発ベンチャー累計100社突破というニュースは、私たち中小企業にとって単なる「他人事」ではありません。それはデジタル化の波がすぐそこまで押し寄せているという警鐘であり、同時に、ITを学ぶことで新たな成長の可能性が広がるという希望のメッセージでもあります。
国の施策がどうなろうとも、中小企業が自らITの基礎力を高めることの重要性は変わりません。今こそ中小企業全体でITの基礎力をアップさせ、未来を見据えた経営へと舵を切る時です。広島の強靭な経済を築き、次世代へと繋いでいくために、私たち一人ひとりがデジタル化の波に乗り遅れないよう、主体的に学び、行動していくことが求められています。